緑の党・東海

脱原発アクション

ダムが破壊されザポリージャ原発の冷却水が危ない

(2023年7月2日 小牧脱原発パレードでの丹羽淳さんのスピーチ)

6月6日未明、ウクライナ南部へルソン州にあるカホフカ水力発電所のダムが破壊されました。ザポリージャ原発の冷却水が危険な状態にあります。

ザポリージャには6基の原発があり、現在停止していますが1時間に約500立方メートルの水が必要です。IAEAによれば、ダムとは別に冷却水用の貯水池があり、現在ここから冷却水をとっているので、あと数カ月は心配ないということです。

原発は核のゴミをまき散らす時限爆弾

原発の隣で戦争が激化しつつあるという信じられない現実です。この戦争により改めて、原発の正体が明らかとなりました。それは「原発は核のゴミであり、さらに核のゴミをまき散らす時限爆弾である」ということです。

戦争がなくても、チェルノブイリと福島の土地は人の住めないデッドランドとなってしまいました。その恐ろしさを承知の上で、私たちはいつ壊れても不思議ではない老朽原発を稼働させています。これは時限爆弾に他なりません。

解決策は極めて簡単!原発をいますぐ停止し廃炉にすることです。これが最も安上がりで安全な方法です。

太平洋諸島フォーラムが「放出延期」を要請

さて福島の汚染水からでる処理水の海洋放出が迫っています。昨年3月、太平洋の島国18ヵ国からなる太平洋諸島フォーラム・PIFが専門家からなる独立諮問機関を組織し、核物理学、海洋学、生物学などの専門家が集まりました。かつて核実験場であったビキニ環礁のあるマーシャル諸島はPIFの加盟国の1つであり、IAEAのモリタリングチームにも加わっています。

このPIFの専門家が福島原発を視察し、日本政府の提供資料を検討し、日本政府に「放出延期」を要請しました。今年2月PIFのヘンリー・プナ事務総長は、「すべての関係者が科学的手法を通して汚染水の海洋放出の安全性を立証するまで、放出は実施されるべきではない。我々の地域のこの断固たる立場は変わることはありません」と表明しています。

誰も責任を取ることはできない

私たちは次のことを記憶にとどめねばなりません。日本が処理水を海洋放出するのは処理水の安全性が確認されたからではありません。タンクが満杯となり置き場がなくなったからです。

現在ある処理水のすべてを海に放出し終えるのに30年以上かかると言われます。30年後の海の自然環境とその安全性に対し、誰が責任を持つのでしょうか。30年後の責任を取れるような人は誰もいません。福島の原子炉には約880トンの核燃料デブリがあり、現在も新たな汚染水が発生しています。責任を取る唯一の方法は、日本の原子力政策の失敗を認め、原発をいますぐ止めることです。これ以外にありません。

「アメリカの下僕ではない」日本への皮肉か

さて4月、フランスのマクロン大統領は、中国を訪問し台湾問題について、ヨーロッパは米中のどちらにも追随しない。「アメリカの同盟国はアメリカの下僕ではない」と語りました。さらに6月5日、NATOの東京連絡事務所開設に反対を表明しました。インド太平洋地域はNATOの管轄外であるから「米中どちらかに肩入れしたくないアジアのパートナー国に間違ったメッセージを送らないようにすべきだ」と語りました。

これはオーストラリア、イギリス、アメリカの3国軍事同盟AUKUS(オーカス)を牽制し、アセアン諸国に配慮したものと思われます。

6月20日、バイデン大統領はカリフォルニア州の支持者集会において、日本の防衛費増額は「私が説得した」と発言しました。岸田政権のもと無理な軍事予算が組まれようとしていますが、岸田首相は「お金がないからできない」と、よう断れなかったということです。マクロン大統領の発言は日本への皮肉のようにも聞こえてきます。

日本は貿易立国として再建した

さてみなさん、貿易黒字とは何でしょうか。貿易黒字とは海外のものを買う権利です。逆に外国の立場から考えると、日本の工業製品を買うためには「円」が必要ということになります。日本の優れた工業製品は円高を実現し、貿易黒字を支えてきました。

これまで私たちが充分な食糧をつくらないにもかかわらず、飽食の時代を築くことができたのは、この貿易黒字のおかげです。敗戦後日本は戦前の軍事産業を平和産業として立て直し、貿易立国として日本を再建しました。しかしながら、現在はそうではありません。

いまの日本は「税金が支える資本主義国」

かつて太陽光パネル、産業用ロボット、ハイブリッドカー、カラー液晶、CCDと日本は環境及びデジタル産業の分野で世界の工業製品のイノベーションを牽引してきました。しかし21世紀となり、IT産業において、日本からのヒット商品はありません。この30年、日本社会は資本が回らず「税金が支える資本主義国」です。残念ながら、いまの日本には株価と不動産しかありません。

貿易立国は国政を見誤った政策

政府は貿易黒字を稼ぐために農家に対し輸出できる食糧をつくれと「輸出拡大実行戦略」なるものをまとめ、2030年に5兆円という食糧の政府輸出額目標を定めています。外国人観光客目当てのカジノや観光立国推進基本法などと言うものも貿易黒字を稼ごうという同じ政策に基づくものです。

くり返しますが、いまの日本は貿易立国ではありません。この数年間、貿易赤字です。人口は減少し、労働力は不足し、生産性は低下の一途をたどり、賃金水準は国際比較において低くなってしまいました。つまり、貿易黒字で海外から食糧を買って食べることができるという時代は終わりつつあると思います。貿易黒字を目指す政府の政策は情勢を見誤った政策です。

農業の大規模化で文化の質が低下する

世界では農業の法人化が進んでいます。小さな農家は経済的にやっていけなくなり、1%の大規模農業が世界の農地の70%を支配しています。

農業の大規模化について、ゴールドシュミット仮説というものがあります。人類学者のウォルター・ゴールドシュミットは1940年代のカルフォルニア州の農業地帯を調査し、農場の規模が大きくなればなるほど、文化的な質が低下するという事実を明らかにしました。ゴールドシュミット仮説とは「大規模農業の割合が増えると地域共同体の生活や文化の質が低下する」というものです。小規模農家が地域の文化を支えているという、極めて興味深い仮説です。

貯金が底をつく前に食料自給率を高めよ

いずれにしても食糧生産が地球の限界に近づくなか、食糧危機は必ず来ます。すでに始まっているのかもしれません。こうした世界で貿易立国を目指すことは極めて危うい亡国の政策と言わねばなりません。

ボーナスが上がったとか、個人資産が2千兆円をこえたとか、海外資産が400兆円あるとか言っていますが、私たちの貯えが底をつく日が必ず来ます。

私たちがなすべきことは、貯金が底をつく前に、食糧の自給率を高めることです。都市の開発を止め、地方における若者の就農を促進し、小規模農家を保護し育てることです。これ以上の都市開発は社会のランニングコストを増し、エネルギー消費の拡大は気候危機を深め、核のゴミを増やすだけです。

食糧の危機は政争の危機

食糧危機は戦争への危機です。6月24日、ロシアではワグネルが反乱を起こし、首謀者プリゴジンはベラルーシへ亡命しました。戦争となれば、所詮人間は使い捨て、戦争ほど人の命が軽くなることはありません。

原発の末路は二通り、事故か廃炉か、壊れるか壊すか、壊れる前に壊す。必ず廃炉にできます。