緑の党・東海

脱原発アクション

7/17海の日:処理水の安全性は確認されていない

7月17日海の日、緑の党の会員、A.Niwaさんのスピーチを載せます。

福島第一原発、処理水の海洋放出が迫っています

(緑の党グリーンズジャパン会員 A.Niwa )

放出に反対する、太平洋諸島フォーラム・18ヵ国の島国の人々が、日本政府に対し処理水の海洋放出延期を要請しています。核物理学、海洋学、生物学の専門家からなる独立諮問機関を組織し、その専門家が福島第一原発を視察、日本政府の提供資料を検討し、日本政府に対し処理水の「放出延期」を要請しました。

今年2月太平洋諸島フォーラムのヘンリー・プナ事務総長は、「すべての関係者が科学的手法を通して汚染水の海洋放出の安全性を立証するまで、放出は実施されるべきではない。我々の地域のこの断固たる立場は変わることはない」と表明しました。

私たちは次のことを記憶にとどめねばなりません。日本が処理水を海洋放出するのは処理水の安全性が確認されたからではありません。タンクが満杯となり置き場がなくなったからです。

30年後、責任を取れるような人は誰もいない

現在ある処理水のすべてを海に放出し終えるのに30年以上かかると言われます。放射線量にして、1年間に約22兆ベクレルの放射能を海へ放出する予定です。海水で薄まるとはいえ、これほど大量の放射能をこれほど長期間にわたって、自然界に垂れ流すのです。「安全基準を満たす」「影響はない」と開き直って、済ませて良いのでしょうか。30年後の海の自然環境とその安全性に対し、誰が責任を持つのでしょうか。30年後の責任を取れるような人は誰もいません。

福島の原子炉には、約880トンの核燃料デブリがあり、現在も新たな汚染水が発生しています。責任を取る唯一の方法は、日本の原子力政策の失敗を認め、原発をいますぐ止めることです。これ以外にありません。

DDTは危険が明らかとなるまで95年もかかった

IAEAは原発が核兵器に利用されないよう監視するのが役割です。ノーベル平和賞を受賞していますが、原発推進の機関です。IAEAの「影響はない」という言葉を鵜呑みにして良いのでしょうか。

たとえば殺虫剤DDTの場合、病害虫を駆除し、マラリヤなど感染症を抑え、農作物の収穫を増やしたとして、DDTの開発者は戦後ノーベル賞を受賞しました。ところがやがて病害虫はDDTに対する抵抗性を持つようになり、後になって、その恐ろしい毒性が明らかとなりました。殺虫剤DDTが発明されてから、その毒性が明らかとなり製造禁止となるまで、なんと95年もかかっています。

現在の時点で将来の安全性を保障することなどできるはずがありません。

海が汚染されれば、雨水や河川を通し、私たちの飲み水までも放射能で汚染されてしまいます。これを黙って見ているだけで良いはずがありません。

汚染が広がりすぎて影響を証明できない

たとえば環境ホルモンの場合、わずかな量で人体に影響を及ぼすと言われています。自閉症やADHDなどの発達障がいも環境ホルモンの影響ではないかといわれています。ところがこれを証明することは極めて困難です。

有毒物質の汚染による障がいが疑われた場合、私たちはこれを実験と観察によって明らかにせねばなりません。すなわち、汚染されたものと汚染されていないものを比較することによってその毒性を証明することができるのです。ところが、環境ホルモンは広範囲にわたって地球全体を汚染してしまいました。地球上のすべてのものは何らかの形で微量の環境ホルモンにすでに汚染されているのです。そのため汚染されたものと汚染されていないものを比較することができないのです。科学の言葉で表現するならば、汚染が広がりすぎて安全基準となるコントロールが取れないということになります。

福島第一原発の処理水の海洋放出はまさに環境ホルモンと同じ道すじをたどろうとしています。これにより地球に住む私たちは、すべてのものが微量の放射性物質に汚染されることになるのです。

IAEAが、海洋放出による影響はないというのは、「もしあなたがガンにかかったとしてもそれが海洋放出の影響であると証明することはできない」という意味です。

除染によって取り除かれた放射能はスラリーとなって蓄積する

さてみなさん、汚染水は処理水として薄めて海に放出すればすべて解決!そんなふうに考えてはいないでしょうか。それは大きな間違いです。

阿武隈山地から流れる伏流水は福島第一原発の原子炉を通り抜け放射能を帯びた汚染水となります。この汚染水はALPSで除染され、処理水となるのですが、この時同時にスラリーと呼ばれる放射性濃度の高い高濃度汚泥水が発生します。除染において放射能が消えてなくなることはありません。ALPSの沈殿処理や吸着素材などのフィルターにより取り除かれた放射性物質は高濃度汚泥水・スラリーとして蓄積されています。

この高濃度汚泥水・スラリーは、現在HICというポリエチレン製容器に保管されています。その量は、今年2月の時点で容器の数にして4128個、さらに毎月約20個のペースで増加しています。

深刻なことは、ポリバケツが紫外線により劣化するように、ポリエチレン製容器が内容物であるスラリーの発する放射線によって劣化することです。容器の寿命が尽きる前に高濃度汚泥水・スラリーを取り出して、新しい容器に詰め替えねばなりません。高濃度汚泥水・スラリーは最終的に乾燥させて保管するということですが、いったいどこへどのようにして保管するのでしょうか。スラリーにはセシウム137・134、ストロンチウム90、コバルト60、アンチモン125、ルテニウム106、ヨウ素129など60種類以上の大量の放射性物質が含まれています。スラリーの放射能濃度さえ公表されていません。

同じことを繰り返しながら違う結果を望むこと、それを狂気という

私たちは原発において、電力と同時に放射能をつくっています。電力は使ってなくなってしまいますが、放射能が残るのです。放射能の閉じ込めに失敗したならば、逃げるのは人間です。私たちは福島第一原発において、放射能の閉じ込めに失敗し、取り返しのつかない大失敗をしました。私たちはまず、日本の原子力政策が大失敗であったことを認めるべきです。ところが政府は、GX電源法を成立させ、老朽原発を60年以上稼働させ、さらに新たな原発を増設しようとしています。

物理学者アインシュタインは「同じことを繰り返しながら違う結果を望むこと、それを狂気という」といいました。まさに日本政府がやろうとしていることは狂気への道です。掃除機や洗濯機なら壊れるまで使ってもかまいません。しかし、自動車や飛行機を壊れるまで乗り続ける人はいません。

老朽原発はいつ壊れるかわからない時限爆弾のようなものです。原発を寿命まで使うことは自殺行為です。脱原発への政策転換こそ正気への道です。

原発の末路は二通り、事故か廃炉か、壊れるか壊すか、壊れる前に壊す。必ず廃炉にできます。