緑の党・東海

政治塾

緑の学習会ー税について

5月20日、税について学びました。講師は、税理士で緑の党静岡県本部の長倉正昭さんです。盛りだくさんの内容に、脳がフリーズしそうだったけど、主な議論をまとめてみました。

なお、当日の印刷資料をご希望の方は、こちらまでご連絡ください。info@greens-tokai.jp

(文責 尾形慶子)

税収:所得税・法人税が減り、消費税が増えた

すべての税収101兆円のうち、大まかに言うと、所得税30%=30兆円、法人税22%=22兆円、消費税33%=33兆円。(図1参照)

昭和の時代から比べると、法人税の割合が減った分、消費税が増えた。(図2参照)

(図2)

割合だけでなく、実際、法人税減税を累積した額(245兆円)と消費税の累計額は(260兆円)同じくらいだ。(図3参照) ということは、法人税を減税しなければ、消費税を導入する必要はなかったのか?

(図3)

 

所得税:格差是正になっていない

税を貧しい人に分配して貧富の差を小さくする効果は、日本では弱い。ジニ係数があまり小さくなっていない。(図4参照)

(図4)

それどころか、1億円を超える高所得者の税負担率はガクっと落ちる。(図5参照)

(図5)

理由は、この辺の人は株配当とか利子収入が多く、こういう金融収入は分離課税を選べる(図6参照)、つまり収入総額ではなく金融収入だけ別個に税率が掛けられるから。

(図6)

おまけに累進課税がゆるくなったから。所得が増えるほど所得税率は高くなる累進課税(図7参照)だが、昔ほど累進性が強くない。(図8参照)

(図7)

(図8)

法人税もいろいろ減税された結果、税収を見ると、所得税と法人税の税収は変動しながらも落ちていき、消費税の税収は税率が上がるたびに確実に増えた。(図9参照)

(図9)

 

法人税:優遇措置のおかげで税負担は大幅に軽減

安倍首相は、法人税の実効税率が外国と比べて高いから、企業が外国に逃げないようにと言い、法人税率を下げてきた。世界的に法人税の引き下げ競争が起こっている。(図10参照)

(図10)

しかし、一部の大企業はべらぼうな優遇を受けている。ひとつは、受け取り配当は非課税という制度。(図11参照)

(図11)

銀行など、子会社からの配当が収入のほとんどの企業の法人税は限りなくゼロに近い。三井住友FGの実効税負担率は0.002%。(図12参照)

(図12)

 

 

消費税を免税される輸出企業

また、輸出企業にも有利な制度がある。輸出する製品の仕入れにかかってきた消費税分を還付してもらえるというから驚く。(図13参照)

(図13)

トヨタ自動車は3200億円も還付してもらえる。(図14参照)

(図14)

貧困率の高い日本

日本の経済格差は広がっており、相対的貧困率は高い。(図15参照)

(図15)

相対的貧困率とは、可処分所得の中央値の半分以下しか所得のない人が何割いるかということだ。(図16参照)

(図16)

日本は、先進国の中ではアメリカに次いで悪い数字だ。(図17参照)

(図17)

格差の解消のひとつの方法として、民主党政権時代に給付付き税額控除が民主・自民・公明の3党合意で法案が可決したが、自民党政権に戻ってからこれが反故にされた。(図18参照)

(図18)

高齢化・財政赤字是正に向けて不公正税制を正す

日本の社会は急激に高齢化が進むと予想される。(図19参照)

(図19)

財政は、高齢化によって社会保障の支出が増え、それをまかなうために国債を発行して収入を増やしている。(図20参照)

(図20)

国の借金は増え続けている。(図21参照)

(図21)

財政赤字を減らすには、ひとつは不公正税制を正して税収を増やすこと。法人税の優遇措置をやめたり、所得税・法人税の税率を上げたりすれば38兆円の増収が見込める。(図22参照)

(図22)

緑の党は環境税の導入・強化を提唱する

最後に環境税だ。たとえば炭素税をみても、日本の税率はほとんど無いに等しい。気候変動対策の強力な切り札として、環境税は早急に導入・強化するべきだ。(図23参照)

(図23)

参考資料

(当HP掲載していない資料も含みます)

1.梶原一義: 税金格差 (㈱クロスメディア・パブリッシング 2017) 2.税収に関する資料 (財務省)  https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a03.htm 3.OECD 格差に関する報告書2011 4.社会実情データ図録(社会問題・社会保障) http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4666.html 5.「給付付き税額控除」を導入すれば複雑怪奇な税制はクリアになる  http://diamond.jp/articles/-/159687 6.富岡幸雄: 税金を払わない巨大企業 (文春新書 2014) 7.神野直彦: 税金 常識のウソ (文春新書 2013) 8. 厚生労働省 平成29年版 厚生労働白書  http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/17/ 9.私たちが望む未来 緑の党11の提言(緑の党グリーンズジャパン 2016.5) 10.総務省統計局  http://www.stat.go.jp/info/today/114.html 11.厚労省 社会保障改革推進本部     http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/kaikaku.html 12.THE LIBERTY WEB  解散総選挙へ 安倍首相の「全世代型社会保障」は、英国病を招いた「ゆりかごから墓場    まで」? (HS政経塾 須藤有紀) https://the-liberty.com/article.php?item_id=1351313.行き詰まる「サッチャリズム2.0」と若者たちの「社会主義2.0」(『イギリス現代史』著者、長谷川貴彦氏 インタビュー 2017.12.20) Wedhttps://synodos.jp/newbook/20817/2 14.消費税転嫁の手引き (中小企業庁 2017.1) 15.諸外国における炭素税等の導入状況 H29.7 環境省 https://www.env.go.jp/policy/tax/misc_jokyo/attach/intro_situation.pdf 16.大谷英暉: 消費税の歴史と問題点を読み解く  (幻冬舎ルネッサンス新書 2017) 17.「消費税率10%超」の議論を解禁する新財政健全化計画の衝撃 森信茂樹:中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 (DIAMOND online 2018.2.12) http://diamond.jp/articles/-/159121 18.平成27年度 社会保障費用統計(政府統計) 国立社会保障・人口問題研究所 http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/fsss-h27/H27.pdf 19.貧困層をより貧しくする日本の歪んだ所得再配分 (東洋経済ONLINE) https://toyokeizai.net/articles/-/2198?page=2 20.宮本太郎: 弱者99%社会 (幻冬舎新書 2011) 21.大沢真理 他: 本来の全世代型社会保障とは何か (岩波書店 「世界」2018.2月号)22.諸外国における炭素税等の導入状況  (環境省 2017.7) 23.https://www.env.go.jp/policy/tax/misc_jokyo/attach/intro_situation.pdf 24.厚生労働省 平成26年 所得再配分調査報告書:    http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12605000-Seisakutoukatsukan-          Seisakuhyoukakanshitsu/h26hou.pdf 25.賃上げ・投資へ「内部留保」着目 「二重課税」の反発も  東京新聞 2017.10.7