- 投稿日:2025年01月06日
- カテゴリ:声を上げよう
緑の党の会員A.Niwaさんが小牧脱原発パレードで、今年最初のスピーチをしました。
気候危機が現実のものに
昨年、2024年は選挙の年でした。4月、韓国では最大野党・共に民主党が勝利し、原発推進のユン政権は少数与党となりました。6月、欧州議会ではウクライナ支援に疑問を呈する右翼政党が躍進し、11月、アメリカではパリ協定からの離脱を公言するトランプ大統領が誕生しました。
その背景には資本主義の経済成長が地球の限界に達し、気候危機が現実のものとなって私たちの生活を脅かしつつあるという深刻な事態があります。干ばつと洪水、戦争と分断、増え続ける難民や移民、食糧インフレによる困窮、さらに環境重視の改革のコストに不満を募らせる人々の存在です。日本においても10月衆院選挙において、自公政権は少数与党となりましたが、気候危機に対する人びとの理解は深まっていません。
自公政権の政治に未来はない
昨年正月の能登半島地震では、珠洲原発建設予定地の海岸線が2mも隆起したにもかかわらず、この1年で女川原発、島根原発が稼働し、新たに稼働した原発は2基増え14基となってしまいました。11月のCOP29では、日本はG7とともに特大化石賞を受賞し、JERAは「CO2を出さない!」と嘘をついてまで、石炭火力を推進しようとしています。
人口減少による労働不足のなか、福島第一原発の廃炉作業はもとより、辺野古の埋め立て、リニア中央新幹線のトンネル工事など、ゴールの見えない不条理な労働を抱え、私たちの暮らしは増々苦しくなるばかりです。半導体、データセンターなどデジタル産業と軍事産業を中心に大量のエネルギーを消費し経済成長を目指す自公政権の政治に未来はありません。
「人類が核兵器で自滅することのないように!」
12月10日、核兵器の非人道性を語り継ぎ、核廃絶の必要性を訴えてきた日本被団協がノーベル平和賞を受賞しました。スピーチに立った田中熙巳(てるみ)さんは「核兵器の保有と使用を前提とする核抑止論ではなく、核兵器は一発たりとも持ってはならない」、「核兵器は人類と共存できない、共存させてはならない」と語り、「人類が核兵器で自滅することのないように!核兵器も戦争もない世界の、人間社会を求めて共に頑張りましょう!」と世界に呼びかけました。
核兵器とは核のゴミです。原発から排泄されるプルトニウムという猛毒物質のゴミ捨て場、それが核兵器の正体にほかなりません。私たちは今、このゴミをゴミのまま保持し管理するのか、それともこれを使用して自滅への道を歩むか、その岐路に立っています。
核兵器は核のゴミ、金銭で試算できるような代物ではない
ところが12月16日、経産省は、原子力発電は風力発電やLNG火力発電より安いという試算を発表し、翌17日、新しい「エネルギー基本計画」において、「原発低減」という文言をなくし、2040年までに原発の電源構成に占める割合を2割にするという原発推進の素案を発表しました。
作家の保坂正康さんは、戦前日本の指導者は「主観的願望を客観的事実」であると偽り、国民をだまして戦争に至ったと述べていますが、まったくその通りです。戦前の話ではありません。原発が再生可能エネルギーより安いというのは日本だけ、世界では通用しません。電力会社は、核のゴミであるプルトニウムを資源であると試算していますが、それは偽りです。私たちは、原発から排泄されるプルトニウム、高レベル放射廃棄物、福島の除染作業によって蓄積する高レベル汚泥水・スラリー、これら核のゴミの処分に永遠に苦しみ続けねばならない。それが真実です。とても金銭で試算できるような代物ではありません。
民主主義とはこうして勝ち取るもの
12月3日夜、支持率が低下する韓国のユン大統領は、何を思ったのか、「非常戒厳」を宣布しました。深夜にもかかわらず、約15万人の市民と190人の国会議員が国会議事堂に集まり、夜明けには戒厳令を解除しました。14日、ユン大統領の弾劾を求める議案が可決され、韓国の民主主義は守られました。韓国における一連の騒動は、「民主主義とはこうして勝ち取るものである」ということを私たちに示してくれました。
核廃絶、脱原発、そして気候危機対策。私たちの住むこの地球環境を将来に残すために、人類共通の目標を掲げる必要があります。「原発が安いなどと噓をつくな!」「新たな原発を作れるものなら作ってみろ!」「できもしないことを言うな!」今年も声を上げていきましょう。
貿易立国の危機
さて、食料インフレが止まりません。円安による海外からの原材料費の値上がりが原因です。実質賃金が低下し消費が伸びず、値上がりを価格に転嫁できないという最悪の状況です。今年度予算は115兆円と過去最高となり、税収が増えているといいますが、それ以上に借金が増加しています。トヨタ自動車など輸出企業は内部留保をため込み、輸出が増えているといいますが、それ以上に輸入が増加しているのです。貿易立国として輸入食料とエネルギーに頼って暮らしてきましたが、こうした経済を続けるためには、海外の人々が欲しがるものを作り続けねばなりません。今の日本にそのような力があるとは思えません。ここ数年日本は貿易赤字国です。円安で相対的に海外資産が増えているように見えますが、今の私たちは過去の貯金を切り崩して食べているようなものです。
基軸通貨ドルの危機
かつて、ドルは金と同じ値打ちがありました。それはアメリカが大量の金を保有していたからです。今私たちは、日銀が発行する円をドルと同じように使うことができます。それは日本が大量のアメリカ国債を購入し、外貨ドルを保有しているからです。金としての価値がなくなった今でも、ドルが基軸通貨として通用するのは、日本のような国がアメリカの国債を購入しドルを買い支えているからです。
ところが世界は日本のように喜んでアメリカのドルを買い支える国ばかりではありません。EUのユーロをはじめとして、BRICSの国々が、ドルに対抗する新たな基軸通貨を画策しています。こうした国々の存在は、借金大国アメリカにとって軍事力に匹敵する脅威です。
「同盟国」の資産を管理するアメリカ
現在アメリカは、グアム、パラオ、バハマ諸島などアメリカが牛耳る地域にタックス・ヘイヴン、租税回避地を作り、そこに世界中の超富裕層の資産を集めようとしています。ガブリエル・グッズマンの『各国の隠された富-タックス・ヘイヴンに関する調査』によれば、かつてスイス、リヒテンシュタイン、モナコの銀行に隠されていたヨーロッパの超富裕層の資産は、現在急速にヨーロッパを離れ、アメリカが監視するタックス・ヘイヴンに移動しているということです。
さらに、アメリカの国家安全保障局(NSA)はユタ州に30億ドル以上をかけ大規模なデータセンターを建設し、世界中の超富裕層の資産を監視しようとしています。かつてNSAはドイツのメルケル首相の携帯電話を盗聴していましたが、アメリカが監視するのは「敵国」だけではありません。自らの基軸通貨ドルを守るために手段を選ばないのがアメリカ流です。ヨーロッパ諸国、日本、韓国、ラテンアメリカなど「同盟国」も監視しているのです。そしてその矛先は私たちの資産です。
GDP栄えて国民滅ぶ
昨年、日本は一人当たりの名目GDPで韓国に抜かれました。今年は台湾にも抜かれるといわれています。しかし私たちの幸福な暮らしにとって、GDPの比較は何の意味もありません。例えば、アメリカのGDPで最も多くを占めるのは保険医療費の18.8%です。ところがアメリカ人の平均寿命は先進国で唯一低下し、2021年76.3歳でした。金が金を生む金融経済のもとアメリカは栄えているように見えますが、工業生産力は低下し、工場労働者はプライドを持つことができず病んでいます。そして皮肉にも、彼らの怒りがトランプ大統領を誕生させました。
トランプ大統領は海外から麻薬が持ち込まれていると言っていますが、実は精神的苦痛を抱える労働者に「オピオイド」というケシの成分から作られる鎮痛薬を処方し金儲けをしているのは、アメリカの製薬会社なのです。BBCによればアメリカではオピオイド中毒で1日に140人が死亡しているということです。
死ぬための消費、不幸になるための労働
フランスの人口学者エマニエル・トッド氏はアメリカ経済を「死ぬために消費をしている」と、皮肉を込めて表現していますが、GDPが増加すれば増加するほどアメリカの労働者は寿命を縮めるということです。他人ごとではありません。関西万博、リニアのトンネル堀、名古屋城の木造再建と、日本の私たちも「不幸になるために労働をしている」ようなものです。
食料とエネルギーを自給し、貿易立国から食料自給国へ、自分の食べるものは自分で作る。それが問題解決への一番の近道です。
原発の末路は二通り、事故か廃炉か、壊れるか壊すか、壊れる前に壊す。必ず廃炉にできます。