- 投稿日:2017年07月20日
- カテゴリ:持続可能な未来のために
(文責:尾形慶子)
2016年4月の電力小売完全自由化以来、大手電力から自然エネルギー会社や新電力に変える人が増えましたが、まだ3-4%にすぎません。
現在、新電力会社は、電気を主として電力卸市場(JRPX)を通して調達しているので、必ずしも100%再生可能エネルギーだけというわけにはいきません。しかし、私たちが脱原発を願うならば、中電など大手電力会社から自然エネルギー中心の新電力へ契約を切り替え、自然エネルギーの需要は伸ばなければなりません。その際、原発を補完している石炭火力発電も抑えて、低炭素社会を目指すことが喫緊の課題です。
学習会の講師は、FoEジャパンの吉田明子さん。FoE(Freinds of Earth)とは、世界75カ国に200万人のサポーターを有する国際的な環境団体のネットワークです。気候変動、エネルギー、森林、開発金融、廃棄物等の環境問題に、グローバルな視野と草の根からの行動で、持続可能な社会をめざして活動を展開しているそうです。
電力小売完全自由化(2016年4月)って何?
電気は作る人(発電)、送る人(送電)、売る人(電力小売)が必要です。このうち、売る人(電力小売)は、2000年に工場・ビル・店舗・商業施設など特別高圧部門(3万ボルト以上)、2005年に高圧部門(6千ボルト以上)が自由化され、最後に2016年、残る家庭など低圧部門が自由化されました。
これによって、様々な企業や団体が電力を売ることができるようになり、消費者は小売業者を選べるようになりました。では、どこから電力を調達するのでしょう。小売業者は、電力卸市場(JRPX)を通して、原発・火力・水力・FIT電力(固定価格買取制度の補助を受けている自然エネルギー)の中から選んで調達します。
安さ競争が、自然エネルギー中心の会社を圧迫、石炭火力を推進?!
自由化のおかげで困った問題が起こりました。消費者が安さばかりを追求すると、自然エネルギー中心の会社は割高に見えるというプレッシャーを受けます。なぜなら:
・今までの電力会社、ガス会社、電話会社などの大手は、いろんな割引を提示。
・世界で閉め出されて安くなった石炭火力を使って、今までの電力会社はコストを下げようとしている。
自然エネルギー系を選んで応援したいが・・・
・FIT電力(固定価格買取制度の補助を受けている自然エネルギー)だけでは足りないし、割高になるため、今までの電力会社からも電力を調達するのはしかたないかな・・・
・そもそも何で発電した電気を調達したか(電源構成)を、開示している会社は半分しかない。各方面(消費者団体、環境団体、国会与党、消費者庁)から開示するようにと声が上がっている。
パワーシフトキャンペーンは、自然エネルギーの電力会社を紹介しています!
FoEジャパンなどが運営しているパワーシフトキャンペーンは、自然エネルギーの電力会社を応援するために、次の5つのポイントを満たすお勧めの会社を紹介しています。
1.電源構成などの情報開示をしている
2.自然エネルギーを中心として電源調達する
3. 原子力発電や石炭火力発電は使わない
4. 地域や市民によるエネルギーを重視している
5. 大手電力会社と資本関係がない
エネルギー調達の前提
大規模な生態系や自然環境・景観の破壊が行われておらず、持続可能性への配慮を十分に行っている発電所からの調達であること。(当該および周辺の自治体や住民)地域のおおかたの合意を得ていること。
さあ、あなたもGO!自然エネルギーの会社を選んでパワーシフトは簡単です!
(1)こちらのサイトから会社を選びましょう。http://power-shift.org/choice/
(2)選んだ会社のサイトで申し込みましょう。
(3)数週間後、業者がスマートメーターの取り付けに来ます。それで、終わり!
さて、学習会の前後も含めて、パワーシフトや脱原発、脱炭素化について、活発なディスカッションが起こりました。下に簡単にまとめてみます。
脱原発・脱炭素化を民主的で持続可能な方法で進めることを考えて、行動しましょう!
***ディスカッションの中から***
・「代替エネルギーを増やさないで原発止めろなんていうのは非現実的だ」という議論がある。1年以上の期間、全原発が止まったが、止まっていた火力発電所を動かすなど代替エネルギーの供給にまったく問題なかった。
・再生可能エネルギーにも問題がある。大型風力発電は、低周波音による健康被害やバードストライクの問題を起こす。水力発電でも、大型ダム建設は持続可能ではない。メガソーラーも問題あり。太陽光も風力も、その設備の短い寿命、大量の産廃という問題をクリアできていない。
・電力を使う場所と発電する場所が離れていることが問題。その不平等をカネで解決しようとする考え方も問題。真に地域の住民が額を寄せ合って、自分達の地域のエネルギーを地産地消を目指すべき。
・岐阜県の市ごとに自治体電力会社設立を働きかけている。民間や自治体が発電(太陽光、バイオマス、小水力)し、それを、その地域内の公共施設ならびに家庭、事業所で使うという地域ごとにオフグリッドを目指す。地域の雇用にもつながる。三重県松阪市がゴミ焼却所のバイオガス発電をもとに自治体電力の設立を準備中。エネルギー分散システムの構築が急務である。
・脱炭素化といっても、電気自動車がガソリン車にすべて取って代わると自然エネルギーだけでは賄えず、原発が必要と言う議論が起こり、脱原発が難しくなる。
・フランス政府が、2040年までに国内のガソリン車とディーゼル車の販売を禁止し、電気自動車に転換する方針とのニュースがあった。大量のガソリン車が廃棄される問題が起こるだろう。
・電気自動車は、鉄などの金属資源の枯渇を早め、リサイクル技術が未発達で環境にダメージをあたえるバッテリーを大量に使う。ガソリン車のCO2問題と比較して、本当に環境への負荷が減るのか、大いに疑問だ。その上、EV車を化石燃料を燃やして作った電気で動かし、転売された中古ガソリン車が発展途上国で利用されれば、CO2問題すら改善されないどころか悪化する可能性さえ孕んでいる。
・喜ぶのは、新車を売る口実ができる経済界と、新車を買う口実をもらえる消費者だけだ。
・エネルギーを使いすぎていることこそ問題。脱ガソリン車ではなく、脱車社会を目指すべきだ。大量生産、大量消費という病気を治癒した上で、ガソリン車にしろ、EV車にしろ、大事に、長く、必要な分使うべきである。