- 投稿日:2017年09月04日
- カテゴリ:持続可能な未来のために
10月14日(土)14時から、下記のように緑の党主催のシンポジウムがあります。名古屋では、サテライト会場を設置し、水野さんの講演などをライブで聴き、質問などを発言することができます。
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シンポジウム<徹底討論>
時代はゼロ成長か?!私たちのめざす社会を考える .
○日時:10/14(土)14:00~16:30 13:30オープン
○東京会場:文京区民センター2A会議室
○基調講演:「資本主義の終焉 未来をつくる脱成長モデル」
水野和夫さん(法政大学教授)
○鼎談:水野和夫さん
畑山敏夫さん(佐賀大学教授/国際政治学者)
中山均(緑の党共同代表/新潟市議)
○東京会場参加費:1000円(緑の党会員・サポーター500円)
【水野和夫さんの著書を学ぶ読書会を開きました】
エネルギー問題と水野和夫の価値観
2017・9・2 丹羽淳
【エネルギーの知識なしに経済学は語れない】
1. エネルギーの基礎
生命とは動的平衡にある流れである (平衡とは生成と消滅の量が等しいこと)
福岡伸一
① 地球における物質の流れはストック&リサイクル 閉鎖的循環
地球という閉じた空間において、そこにある物質を何度も繰り返し利用する。
自然は完全なリサイクルシステムである。
38億年の歴史で産業廃棄物、核のゴミなど分解再利用できないゴミが発生したのは20世紀になってからである。
② 地球におけるエネルギーの流れはスルー 太陽からのエネルギーを源とする開放的循環
地球の生命のエネルギー源は太陽からの放射エネルギー(太陽放射)である。
化石燃料は過去の太陽放射を光合成により蓄えたものである。
地球から宇宙へ放出されるエネルギーを地球放射という。
太陽放射と地球放射は等しいため、地球の温度は一定に保たれる。
太陽放射は約174兆kW。1.37kW/m2(太陽定数)、地球全体の平均はこの1/4となる。
2. 地球の経済 地球のエネルギーの歴史
① 自給自足の時代(38億年) 江戸時代まで 「閉じた」という言葉の意味は自給自足と理解できる。
光合成による太陽からのエネルギーを消費する生活 人間の消費量は約100ワット(2000kcal/日)
エネルギー消費が少ないため化石燃料などエネルギーを蓄積できる。
物質循環は完全なリサイクルシステム すべての有機物が分解される … ゴミがまったく生じない
農産物の生産 … エネルギーの生産
② 貯金生活の時代(約200年) 1957年:サウジの大油田発見
化石燃料を消費する生活 CO2の蓄積 … 地球温暖化
リサイクルシステムの崩壊 分解されないごみ(産廃)の発生 …生態系の破壊
工業製品の生産 … エネルギーの消費
③ 借金生活の時代(50年) 1970:日本の原子力発電始まる
原子力発電による供給過剰の時代 「資本主義にとって原子力は神である」 大澤真幸
高レベル放射性廃棄物(核分裂生成物)とプルトニウムの蓄積
原子力 … 放射能という借金の蓄積
3. 弁証法、その他
人類のエネルギー消費量の増大に伴って、エネルギーの質が太陽放射、化石燃料、原子力と変化
食料と原子力は人類が消費するエネルギーだが、対立物である
自然エネルギー、次に化石・原子力エネルギーそして再び自然エネルギーへ
①は可逆変化、持続可能 ②、③は不可逆変化、持続不可能
地球温暖化の不可逆性リスクの増大
【資本主義の歴史】
1. 資本主義の始まりは銀行業である。中心(覇権)と周辺(開発すべき市場)により経済は成長する。
12世紀イタリア、フィレンツェの銀行業が原始資本主義の始まりである。
資本主義とは銀行を中心とする経済社会システムである。
利子率によって資本主義社会の健全性がわかる。平時の金利はおよそ2~5%。
国民国家の成立とともに国富を増大させる。重商主義
覇権国イタリアを中心に資本主義がヨーロッパ大陸に広がる。パックス・ロマーナ
資本主義には常に中心と周辺があり、格差はつきものである
資本主義とはお金の蒐集である。その背景にはノアの方舟に起源をもつキリスト教の価値観がある。
人間の欲望は無限で、お金はいくらあっても欲しい。一見するとお金は限界効用が無いように見える。
2. 周辺がなくなった時、経済は停滞、低成長となる 長い16世紀
ヨーロパ大陸を資本主義が覆い尽くしてしまい、開発する周辺を失った時、経済成長のない低成長の時代となる。この15世紀後半から17世紀前半までを長い16世紀という。
資本主義はキリスト教圏の外へ広がらなかった。閉じた資本主義、陸の帝国。
3. 陸の帝国から海の帝国へ 覇権国の交代
陸の帝国が新たな市場(周辺)を見つけることができなかったのに対し、大航海時代、産業革命に成功したイギリスは海の向こうに開発すべき新たな市場を求めることができた。自由貿易主義
イギリスを覇権国とする海の帝国の誕生。パックス・ブリタニカ
覇権国は経済成長のため領土拡大と戦争を繰り返し、資本主義は経済成長とバブルを繰り返す。
影響は、国境を越えて周辺国家に及ぶ。帝国主義
1634~37年 チューリップ恐慌 オランダ
1720年 南海泡沫事件 イギリス
ミシシッピ泡沫事件 フランス フランス革命(1789~99)
戦後覇権国はアメリカに交代、開発すべき周辺がほとんどなくなる。パックス・アメリカーナ
1971年 ニクソンショック
1973年 オイルショック 資本主義の終わりの始まり 長い21世紀歩始まり
19・20世紀 植民地と戦争 覇権国を支える軍事力と軍事産業
4. 地球の限界は成長の限界 ヨーロッパ大陸(陸の帝国) → 全地球(海の帝国) → 電子・金融空間?
旧ソ連との覇権争いに勝利したアメリカは電子・金融空間に新しい市場を求める。
国家は国民と縁を切り、投資家と手を結ぼうとしとぃる。 民主主義の危機
アメリカ金融・資本帝国 1992年 日本の土地バブル崩壊 1990年 湾岸戦争
1997年 アジア通貨危機
2007年 サブプライムローン 2003年 イラク戦争
2008年 リーマンショック
2009年 ギリシャ経済危機
:
? アベノバブル
5. ポスト資本主義は新中世、定常経済の複数の閉じた帝国が並び立つ世界
今の世界は長い16世紀と同じ状況にありまさに長い21世紀である。それは資本主義の終焉であり、歴史の危機である。
銀行の異常な低金利はもはやこの地球上に開発すべき市場がないことを示している。成長のない定常経済において銀行の役割の縮小は資本主義の終焉を示している。ポスト資本主義は新中世である。
ポスト資本主義への変革は今後100年以上をかけゆっくり進行する。
〇東芝とフォルクスワーゲンの逆説。
企業は利益を求めれば求めるほど赤字となり、労働者の賃金は減少する。
コンビニは数を増せば一店舗当たりの売り上げは減少。ヤマト運輸はサービスを増せば増すほど赤字、賃金未払い。リニア中央新幹線、墓穴を掘るとはこのことである。大名古屋ビルはリニアのお墓。
〇石油がなくなることはないが、石油価格が上昇する。エネルギーの崖、オイルピークパニック。
〇価値観の変化が必要
「より遠く、より速く、より効率に」から「より近く、よりゆっくり、より寛容に」
企業は減益計画をたて、経済成長ではなく定常状態を目指す。株式配当は地域に根ざした物品で払う。そうすれば投資家は自然に遠ざかる。
〇資本主義ではない地域経済、閉じた地域帝国
現在これに最も近いのはEU帝国である。
EU帝国以外の地域帝国候補、アメリカ、ロシア、中国などいずれも覇権の拡大を目指している。
イギリスの脱EU、アメリカファーストなど保護主義は市場を自国に取り戻すというゆり戻しである。
6. 私見
〇持続可能なものは可逆変化。発展は不可逆変化であり、持続不可能。持続可能な発展は二律背反?
〇民主主義と科学技術を持って江戸時代のように暮らす。
日本の江戸時代は、士農工商という身分制度のなか、政治権力を握る武士階級と経済権力を握る商人階級に権力が分かれていた。(磯田道史『武士の家計簿』) 武士は経済力のない覇権者。
〇電子・金融空間は中身なし
実体経済(5000兆円)から金融工学というお金を吸い取るポンプで金融経済(12倍の6.0京円)へお金を吸い上げる。ただし、金融経済は思い込みで膨らんだバブル。
金融経済からお金を巻き上げて社会保障にまわすという発想には限界がある。
〇今必要なのはイノベーションではなくパラダイムシフト(コペルニクス的転換)
のんびりぼちぼち暮らすことが進歩である。AIは人間の労働を奪う、電力消費のかたまり。
〇地球温暖化の不可逆性リスクの高まりなど危機が迫るなかゆっくりした変革で良いのだろうか。
〇政治ベクトルと経済ベクトルは平行線に近い
政治ベクトル
戦争と対立 → 平和 (EU)
経済ベクトル
地域経済 保護主義 → 自由貿易 格差と対立 (TPP)
平和を求める人と物の自由な往来は自由貿易につながり、格差と対立を生む。
ヨーロッパはドイツの一人勝ち、EUは小さなTPPとなってしまった。
地域経済や保護主義を求めることもまた戦争と対立につながる。
〇アベノミクスの顛末 アベノバブル
「資本主義にとってインフレは神である」 水野和夫
1000万円札をする日、お金が腐る日。一兆円の厚さ10kmが10m。 お金という商品の限界効用。
【金ピカの時代とその行く末 ソディの言葉】
Frederick Soddy (1877~1956)
放射性元素の崩壊過程を研究、放射性核種の変位則を発見、
アイソトープの概念をはじめて世に示した。1921年ノーベル化学賞
「自分たちが過ごしている”The flamboyant era”(金ピカの時代)は、自分たちの功績(発見や発明のこと)によってではなく、石炭紀の太陽光エネルギーを固定した蓄積を相続してきたために実現したのであり、それゆえ、現世は一回だけはその収入(太陽光エネルギー)を超えて生計を成り立たすことができたのである。」
“Wealth, Virtual Wealth and Debts” p30
【問題点】
社会システム、経済理論などすべてのことが経済成長を前提に作られている。
現世の富(Virtual Wealth)は、これを支えるエネルギーが不足したとき、借金(Debts)となる。
【結論】
「ミネルバのフクロウは夕暮れに飛び立つ。」 ヘーゲル(1770~1831 ドイツの哲学者)
すべてが終わってからでないとものごとの本質は見えてこないという意味。
【考えるヒント】
「もし世界というものが、これほど単純でなかったら、いつまでも存在することは不可能だろうね。この貧弱な土地は、もう数千年も前から耕されてきているわけだが、地力はいつでも同じなのだ。ほんの少し雨が降り、ほんの少し日があたれば、春を迎えるたびに緑が萌える。そしてそれがずっとつづいて行くのだ。」
私はこの言葉には、答える言葉も、つけ加える言葉も知らなかった。
エッカーマン(1792~1854)『ゲーテとの対話』
「自然は常に正しく、自分が誤る。自然に従えば、すべてが成り行く。」
ゲーテ(1749~1832)
「過去が未来を食い尽くす。」トマ・ピケティ(1971~ フランスの経済学者) 『21世紀の資本』p602
【新しい価値観】
電力より人力、お金より食料 環境問題はノアの方舟
本を読んだ人も、読んでない人もシンポジウムにご参加ください。名古屋サテライト会場(名古屋市教育館)にも大歓迎! http://greens.gr.jp/event-info/20894/