- 投稿日:2018年04月11日
- カテゴリ:緑の党・東海の活動
(文責:尾形慶子)
4月 8日の学習会には、少壮気鋭の弁護士、矢崎暁子さん(名古屋北法律事務所)を講師に迎えました。
‹テーマ› 日本国憲法は完璧な憲法なのか?改正は不要なのか?安倍改憲は何故いけないのか?
講義の主な項目は下のとおり:
«はじめに»
・自民党は日本国憲法を変えることを「使命」としている。(旧綱領に明記)
«日本国憲法が最も大切にしている価値観»
・すべて国民は、個人として尊重される(13条):
様々な「個性」がぶつかり合うことを前提に、個々の人間を等しく尊重する社会を作る。「人間だから」というだけで等しく尊重されるのが人権。義務を果たした人だけ権利があるのではない。ふしだらな人も、だらしない人も、努力しない人も。憲法学に人権の「大小」という考え方はない。
・自民党改正案に見る不安:
個人の価値観、生き方に介入。「より小さな人権がやむなく制限されることもあり得る。」(自民党改憲草案Q&A)
«緊急事態条項による人権制約の恒常化»
・総理がテロや大災害のときに「緊急事態だ!」と宣言する。いったん宣言すると:
・法律と同じ政令を内閣が制定できる。つまり、人の権利を制限する・義務を課すことができる。
・令状なしに逮捕できる・差押え・所持品検査ができる。
・集会禁止・報道機関の閉鎖・裁判官の免職・海外渡航の禁止ができる。
・国会が措置をあとから承認する。衆院は、任期が満了になっても解散されないから、与党議員が永続的に承認する可能性がある。
・安倍改憲素案では、「誰かの利益を守るため」に「誰かの利益を制限する」ことを当然に予定し、国会の事前承認を得ずに内閣の決定だけで軍隊の出動や言論統制が行われうる。
«教育無償化は改憲しないとできないのか?»
・自民党改正案24条1項「家族は互いに助け合わなければならない」
「自助」を最上位に置き、「公助」を最下位に置く。行政の責任を家族に転嫁する。
「自助」を最上位に置き、「公助」を最下位に置く。行政の責任を家族に転嫁する。
・自民党改憲素案26条3項で、教育は「国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであ」り、国は「教育環境の整備に努めなければならない」としているが、日本国憲法25条2項で既に努力義務を負っている。
・憲法に謳わなくても、予算の使い方を見直すことで無償化すれば良い、自公は政権与党なのだから。
«日本国憲法の欠陥とは»
・天皇制:制度そのものが憲法の保障する基本的人権の例外であり、廃止が望ましい。
«9条に明記して自衛隊を「合憲化」すべきか?»
・「戦力」を「保持しない」から、「自衛権」を含むあらゆる「武力行使」ができない。「自衛隊は違憲」が憲法学者の多数意見。
・国連加盟国は武力行為禁止原則に同意している(1928年調印のパリ不戦条約(自衛権は留保)、1945年調印の国連憲章(「共同の利益の場合」を除く))
・現代の戦争はほとんどすべて「自衛権の行使」で始まっている。
・「必要最小限度」論、専守防衛が従来の政府解釈。
・2014年閣議決定にて、「存立危機事態」での集団的自衛権行使も「必要最小限度」に含まれる。
・安倍改憲素案では、9条の2を追加:「必要最小限度」から「最小限度」を削除して、「必要」なら無制限の軍拡・軍事行動が可能。
・山尾・倉持「立憲的改憲論」:「『直接的』な外国の武力攻撃及びその着手に相当する行為によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の侵害に対して、これを排除するために他の適当な手段がない場合があった場合」、「必要最小限度」の範囲で「個別的自衛権」を行使できる。「集団的自衛権」は認めず、「専守防衛の理念の下、受動的かつ抑制的に運用されなければならない」とする。
・たとえ「個別的自衛権」に限定しても戦争が起こる危険はある。真珠湾攻撃も個別的自衛権の行使だった。
«軍事衝突に発展させないようにするしかない»
・民間人の交流、企業の相互進出等による経済的な相互依存関係の強化。トラブルを裁判によって解決できる仕組み等。
«もし、アメリカと北朝鮮のいざこざから、北朝鮮が在日米軍基地を武力攻撃したら・・»
・アメリカに対して:
紛争を収束させるよう求め、それまでは在日米軍を撤退させる。なぜなら、日米安保条約は、日本国および極東の平和と安全のためのものだから、日本を巻き込むのは条約違反。
・北朝鮮に対して:
日本領域への攻撃をやめるよう求める。やめない場合は、国連安保理に訴える。
・自衛隊は応戦しない。被害地域の市民の避難誘導と復興活動のみ。
«平和憲法の日本でこそ果たせる役割を»
・非武装交渉・難民受入れ・復興支援・教育や医療や技術支援・資金援助など。
«結び»
・憲法を現実に合わせるのではなく、「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」(97条)として保障された永久不可侵の権利を、主権者である私たち自身が、日常の中で正しく行使し続けて法制度として日本国憲法の理念を実現させ、更に将来の世代へ受け渡していかなければならない。
当学習会の資料をご希望の方は、こちらメールアドレスまでご連絡ください。
info@greens-tokai.jp