- 投稿日:2017年03月23日
- カテゴリ:持続可能な未来のために, 緑の党・東海の活動
講義メモを掲載します。
青木さんの講義のあとに、緑の党の社会保障政策を見ながらさまざまな意見が出ました。(赤字は会場の意見です)
とき:3/18(土)
講師:青木秀和さん
メモ文責:尾形慶子
<青木さんからスライドを見ながら講義>
まず、学習会のタイトルが「脱成長路線と緑の党の社会保障政策・・」とあるが、脱成長はすでに路線ではない。自明の事実だ。
前回のまとめで言うと、資本主義は「主義」ではなく状態である。つまり、資本が生産活動の主体となっている経済システムのことだ。
*「自由主義的資本主義」「社会主義的資本主義」「共産主義的資本主義」は「主義」である。
経済成長は資本主義がある時期、生み出した結果である。今、脱成長、より正確には成長停止の状態にある。
経済は2つの側面で見ることができる。統計がある。
A)貨幣による財の交換→マクロ統計「産業連関表」を見よう。
B)エネルギーを媒介した富の獲得→1次エネルギー供給の統計を見よう。
A)貨幣に換算した財の動きを見てみよう。
GDP(国内総生産)は、図にある要素を足し上げ、中間投入/産出を除いたもの。
産業連関表は、縦軸がどの部門に財を配ったか、横軸はその財が何になったか。
行(横→)を見ると、例えば製造業の加工機械が別の製造業に売られたり、車が家計の消費になる。列(縦↓)を見ると、例えば製造業が中間材を買ったり、営業余剰を生む。
GDP(国内総生産)は縦軸の粗(あら)付加価値の合計、GDE(国内総支出)は横軸の最終需要の和から輸入を引いたもの。
アベノミクスは物価を上げようとしている。物価が上がれば総産出額は増えるが、所得が上がるとは限らない。中間投入が増えるだけかもしれないし、企業所得に吸い取られて雇用者所得は減るかもしれない。
B)エネルギーの動きから経済を見てみよう。
日本の1次エネルギー総供給は、20.8EJ=オイル換算で500メガトン。
損失エネルギー:正味利用エネルギーの比=約2:1
ただし、損失エネルギーには、橋・道路などインフラを作った分も含まれる。
1次エネルギー総供給=全産業の産出額
1次エネルギー供給と全産業産出は、タイムラグはあるが同じように増えた。
50年代から70年代のように、エネルギー消費も産業産出もうなぎのぼりになるのを想定して、経済学はでき、社会システムは構築された。
現政権は、経済成長が正常ととらえ、成長が減速・停滞するのは異常、経済政策を駆使して成長させようとする。
目覚しい経済成長は、歴史上1回限り。子孫は繰り返せない。人類が自然資本を大量に取り崩して得た利益だから。莫大なエネルギーと莫大な資源と消費して得た経済成長だ。
今、人類は経済成長後の生活を受け入れる以外ない。
エネルギーの供給と需要は、天井に達している。市場の需要も飽和している。誰かが利益を増やそうとすると、誰かが利益を失う。オリンピックなどの経済波及効果はあるが、同時に反波及効果もある。
成長依存型の社会政策は破綻する。
社会保障の財源は、ほとんどが現役が稼ぎ出している。現役の数が減り、非正規シフトにより賃金も減っている。資産収入(投資収入/運用利益)に依存(16%)している。GDPが成長しないとやっていけないが、GDPは成長しない。
<緑の党の社会保障政策を見ながら、いろいろな意見>(赤字は会場の意見です)
http://greens.gr.jp/seisaku-list/2368/
政策④ 公正な負担によって、すべての人の生存権を保障する
社会保障を支える財政の危機
社会保障給付費の財源の約6割は、社会保険料によって賄われ、租税負担率が低いまま。
不公正な税制の抜本的改革
緊急に取り組むべき課題は、ムダな歳出を思い切って削減すること。
富裕層への課税強化:所得税の累進性を強化、金融所得への課税を引き上げ、相続税が強くする。またグローバル企業への課税強化:法人税課税の拡大、株式配当への課税。
個別政策
生存権を保障する最低所得保障
1 将来的に、ベーシック・インカムを導入する
2 当面は、年金制度を抜本的に改革し、同時に給付付き税額控除の導入と生活保護の改善・捕捉率の向上で貧困をなくす。
*所得がないか年収300万円以下の低所得者に対して給付付き税額控除を導入する。
→みんなが確定申告しないと実現できない?
*国民年金・厚生年金・共済年金を一元化し、最低所得保障年金に支えられた所得比例年金の制度に移る。
→共済年金はやばいので厚生年金に一元化された。現制度を残しつつ新制度を30-50年かけて移行しないといけない。
(略)
*生活保護の「最低生活費」(東京都区部では83700円)を下回る所得しかない人には、無条件に生活保護を給付する。同時に、医療扶助が生活保護の給付総額の半分を占める、受診する医療機関の指定による過剰受診、就労へのインセンティブの欠如などの問題点を改善する。
→1類補助(家計)と2類補助(個別)合わせて12万くらいになる。「無条件に」は性善説にたっている。大丈夫か?
誰もがいつでもどこでも安心して自分らしく生き続けられる支えあいの仕組みを、共助と公共サービスの連携によって構築する
(略)
5 介護報酬を大幅に引き上げ、介護従事者の賃金と労働条件を抜本的に改善して人材を確保し、サービスの供給を増やす。(略)
*利用者の自己負担分をなくし、低所得の高齢者が安心して介護サービスを利用できるようにする。
→500円でもいいからお金を取るべきでは?
(略)
9 低家賃の公営住宅の増大、低所得者への家賃補助などによって、住まいの権利を保障する。
*「持ち家」制度から転換し、低家賃の公営住宅を増やす。低所得者への家賃補助を行なう。
→若者向けの安い住宅を。住んだらお金を上げるくらいの仕組みを。
*地方自治体が空き家の利用と管理を行ない、住まいのない人に提供する。
→ライプチヒ:100万人から60万人に人口減ったが、空家を生かして80万人まで回復した。リバプールも空家対策を行った。
(略)
公正な税制で借金を増やさず、所得再分配を強める
(略)
13 所得税の累進性や相続税・金融課税の強化など富裕層への課税を強化し、所得再分配を強める。
→最高税率は所得1800万円以上で40%。,1974年の最高税率は75%だった。
(略)
*1億円以上の金融資産を有する人に富裕税を課す。
14 法人税率は引き下げず、租税特別措置を廃止し、グローバル企業への課税を強化する。(略)
16 環境税を本格的に導入する。→環境目的以外に使ってはいけない。農薬な毒物等物品税を。電源開発税を放射能税に変えよう。
<その他の意見や感想など>
・躍進するヨーロッパの左翼は、反緊縮と財政支出を唱えている。アベノミクスの第1の矢「金融緩和」はこれを取った。第2、第3の矢が旧来の無駄な公共投資で経済成長を再来させようとしているのが間違い。
・(上の意見に対して)金融緩和、量的緩和を2ラウンドしても成長はできなかった。もう止めたらどうか。
・国家のあり方、地方自治のあり方を考えよう。
・失敗の条件に学ぼう。上手くいく条件は必ずしもあてはまらないが、失敗の条件は同じだから。
・内部留保とは設備投資をサボった結果だ。利益を労働者に回さないといけない。内部留保を積み上げたって、東芝・シャープ・サンヨーのようになる。
・軍事費(防衛費)を減らして社会保障に回して欲しい。しかし、現政権が続く限り、アメリカからの負担要請は減らないだろう。
・安全保障でもっとも大切なのは、日本海側に並んだ原発を撤退すること、核燃料をどうするか。
・攻撃されない外交力しかない。そのためには軍備を捨てること。
・経済成長の実体はエネルギー消費である。水野和夫「株式会社の周辺」にあるように、減益計画を立てるべき。
・若者としては、「優雅なる衰退」ではかなわない。若者の夢をそいではいけない。