緑の党・東海

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だから考えたい、気候変動のこと

10月の総選挙の前に、緑の党サポーターの阪野智夫さんが配信している通信「C&Lリンクス」で、緑の党共同代表の尾形慶子が紙上インタビューを受けました。

だから考えたい 気候変動のこと、尾形慶子さんに聞きました

緑の党共同代表・尾形慶子

10月14日午後、衆議院は解散しました。

与野党激突、政権交代はなるか。この国の行方、子どもたちの未来、今日の暮らし明日の暮らし、政治の公平公正を問い、「新コロナ」感染の終息、そして瀕死の「宇宙船地球号」を放っておいていいのでしょうか。

選挙、だから考えたい。知ってほしい、気候変動・地球温暖化のこと、なぜこうなってしまったか。地球的に考え、小さなことでもいいから地域で行動を。

1、今年のノーベル物理学賞で真鍋叔郎氏ら3人が受賞しましたが、受賞理由に「地球温暖化の将来予測の基礎を築く」とあり、「気候危機への警鐘」の声もあると伝えられています。尾形さんはこの受賞とその理由に関してどう受けとめられましたか。

(尾形)この時期に気候モデルの父をノーベル賞に選んだ、ノーベル委員会の意図を明確に感じます。日本は、温室効果ガス排出世界5位(*注)なのに気候対策への熱意が低いです。しかし、真鍋博士の受賞によって大きく潮目が変わるでしょう。日本の知識人や政治家の中に、いまだに温暖化懐疑論や「IPCCは資本家の回し者」論がありますが、日本の誇るべきノーベル賞受賞者の偉業を否定する訳にいきませんから

ノーベル物理学賞受賞者・真鍋叔郎さん

真鍋博士は、1967年にそれまでにない計算モデルを使って、CO2が2倍になると地上の気温は2.3℃上がると、地球温暖化を予告しました。1988年、NASA研究者ハンセン氏が、米上院公聴会で地球温暖化への国際社会の関心を引きました。それを契機に、同年、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が設立されました。真鍋博士自身も公聴会で証言し、1990年のIPCC第1次報告書には執筆者として参加しました。IPCCの報告を元に、1992年、気候変動枠組み条約が採択され、世界が温暖化対策に取り組むことになりました。

真鍋博士は、50年後100年後、「地球の救世主」と称されるでしょう。ただしそれは、今、私たちが地球を救う行動を起こし、本当に地球が救われた場合の話です。  

2、最近「気候正義」「気候責任」「気候危機」という言葉を聞くようになりました。これについて短く説明するとどういうことになりますか。

(尾形)「気候危機」とは、気候変動によって地球が危機に陥ることです。すでに皆さんは気候危機を感じつつあると思いますが、これは序の口です。地球の平均気温がたった1.2℃上がっただけで、今年も世界ではひどい森林火災・干ばつ・豪雨・浸水が起こり、日本でも線状降水帯による豪雨・土砂崩れなど被害が起きています。このままいくと気温は3℃上昇します。人類の大半を死亡させるような危機が訪れます。気温上昇を2℃に抑えてもダメです。人類を死滅から救うティッピングポイント(転換点)は1.5℃です。

「気候責任」とは、このような気候危機になったのは誰の責任かということです。それは、先進国・富裕層・大人世代です。世界の裕福な10%の人口が地球上のCO2の半分を排出しています。(*注)アメリカ人は1年間に1人当たり15.1トンを、日本人は8.5トンを排出しますが、アフリカなど途上国の人たちは0.98トンしか出しません。「炭素予算」と言う言葉があります。気温上昇1.5℃に抑えるために、人類はあとどれだけの量を排出できるかです。


温室効果ガス排出順位 https://www.jccca.org/download/13330

先進国は、炭素予算を途上国に残しておかなければなりません。そして、彼らがCO2を排出抑制しながらも、国を発展できるよう技術的資金的援助を行う責任があります。 (*注)Extreme Carbon Inequality 2015 : https://www-cdn.oxfam.org/s3fs-public/file_attachments/mb-extreme-carbon-inequality-021215-en.pdf

「気候正義」とは、気候危機の張本人が責任を取り、気候危機の犠牲になる人・地球環境を救わなければならないということです。資本主義、新自由主義の原理では、安く買い高く売って利益を得ることが善です。資金力・権力のある者が、それを使ってますます金と力を増やし、貧しい者・弱い者との格差が広がります。このシステム(制度)が気候危機を深刻にしました。お金では測れない自然環境・共有地・助け合い・コミュニティの繋がり・文化と芸術などを、やすやすと壊しています。これを根本的にくつがえそう(Uproot the system!)と、世界の若者が叫んで立ち上がりました。気候正義を実現するには、制度を根っこから変える必要があります。

3、「気候変動・地球温暖化」の課題は、市民運動の根幹ともいえる「地球的に考え、地域で行動を起こす」に合致します。世界各国の動きの解説は膨大になりますので割愛しますが、地域的な、特にこの愛知、名古屋における活動例えば、温暖化対策の強化を求める全国的な若者の運動「Fridays For Future Japan(フライデーズ・フォー・フューチャー・ジャパン)」があります。こうした若者たちの活動と大人たちの態度をどのように考えておられますか。

(尾形)若い世代も大人たちも、日本では民主教育が不十分なので、「みんな仲よく」「和を乱さない」傾向にあり、自分の意見を表明することが苦手です。気候問題についても、外国の事情に触れた若者からFridays For Futureの運動が始まりました。名古屋でも海外留学経験者や在住外国人がFridays For Future Nagoyaを始めました。また、ドイツ在住の環境活動家・谷口たかひささんが日本中でお話会を催し、「地球を守ろう」と訴える若者たちがその輪をひろげ、気候マーチ、ゴミ拾いイベント、生物多様性を守る「動物福祉」の活動をしています。

若者たちは、気候対策を進めない大人たちに怒っていますが、一方で協力し合おうとも考えており、立派だと思います。たとえば、電気を多消費する自動販売機を減らしたいFridays For Future Japanの若者が、自販機産業ユニオンと共同でストライキを行いました。「過重労働で自分の時間も持てない、地球の未来を考えることもできない」自販機労働者の現状を憂いてのことです。また、フランスで炭素税増税に反対する「黄色いベスト」運動の参加者をFridays For Futureの若者が粘り強く説得したという話があります。

4、10月31日に、衆議院議員選挙があります。各党はそれぞれ「気候変動・地球温暖化」「カーボンニュートラル」などの政策を織り込んでいますが、新型コロナ感染対策、経済再生などが優先課題のために陰になりがちです。またどこまで本気なのかも気になります。尾形さんは、この選挙で期待するもの、また各党の政策についてどう評価しておられますか。

(尾形)気候対策は重点政策ではないですが、やっと取り上げられ始めました。立憲民主党の自然エネルギースペシャリスト山崎誠議員が、実現可能な数字を積み上げたカーボンニュートラルへの道を示しました。日本共産党は、NPOなどの提言をよく研究した「戦略」を発表しました。社民党も、福島瑞穂党首が環境問題を声にし、政策集に気候対策を取り上げています。ただ、愛知県連合の関心は薄い模様です。

心配なのは、自民・公明と維新の会が、小型原発など気候対策を言い訳に原発を推進しようとしていること、化石燃料を残そうと当てにならないCCS技術などを夢見たり、あるいは化石燃料由来の水素・アンモニアを混ぜて石炭火力を延命しようとしていることです。また、再生可能エネルギーにしても、森林を破壊するメガソーラー・メガ風力のプロジェクトが進んでおり、生態系を壊し土石流の原因を作る恐れがあります。気候対策を新たな金儲けのタネにするあまり、環境破壊につながっては本末転倒です。

また、真剣に気候対策を考えるなら、炭素税の大幅強化と「公正な移行」を避けては通れません。炭素税によって「二酸化炭素を出すと高くつく」ようにしないと排出削減はできません。しかし、炭素税は、消費税と同じように貧しい人にも負担がかかります。炭素税を財源に社会保障を充実しないといけません。

もうひとつは「公正な移行」です。自動車業界はガソリン車から電気自動車に転換しなければなりません。鉄鋼業・セメント業のように燃料多消費産業は縮小しなければなりません。それらの労働者が大きな痛みを押し付けられないように産業転換する、「公正な移行」を労働界と議論していく必要があります。

5、最後に「気候変動・地球温暖化」について、改めて訴えたいことは何でしょうか。

(尾形)世界の若者の間で「気候不安症」が広がっています。1万人の調査によると、75%が「未来は怖い」と答え、45%は日常生活に影響を及ぼすほど不安を持っており、39%は将来子供を持つことをためらっています。私の知り合いの30代の女性は、「家庭を作る幸せはあきらめた。でも上の世代の人たちが公害や原発や平和の運動をしてくれたおかげで、自分たちは気候問題に集中できる。感謝している。」と言います。私は泣けて、泣けてたまりません。私たち世代は、なんてことをしてしまったのだろう。子どもや孫や未来の世代に、幸せに寿命を全うできる地球を残せるのは、私たちが最初で最後の世代です。頑張りましょう。

ありがとうございました。

 私たちの日常の生活では、空気も水もきれいで豊富にあって、家はオール電化が夢とばかりに、電気は“お金さえ払えばいくらでも”と・・・。最近の自然災害の猛威続発に誰もが“何かおかしい”と感じ、新コロナの感染も人間が地球に悪さをしたことのしっぺ返しかなとも。

地球がいつまでも「青く美しい星」であり続ける、そのために“私たちが最初で最後の世代”は重い言葉ですが、それを背に負ってまだまだ続く道を共に歩んでいきましょう。(10月13日 阪野記)